東京都現代美術館
Japanese
English
Chinese
Korean

サイトマップはこちら お問合わせはこちら

建築、アートがつくりだす新しい環境―これからの“感じ”

建築、アートがつくりだす新しい環境―これからの“感じ”  アーティスト


AMID.cero 9 建築家 [クリスティーナ・ディアス・モレノ(1971年―)、エフレン・ガルシア・グリンダ(1966年―)により、1997年設立。マドリードを拠点に活動] AMID.cero9は、ピンクやゴールドなどのヴィヴィッドな色使いと独特な形状を用い、「人々の集まる場」としての建築をつくり出してきた。パリ建築大学(ESA)のイベントのために計画されたバルーン型のパヴィリオン《ゴールデン・ドーム》は、公共イベントやショーなどの土地の文化と人々のつながりを作り出し、公共機関が陽気な変身を遂げるための空間である。その不可思議な形状は造形への関心のみから生まれたものではなく、ガウディの懸垂曲線による形態や、浮力調整のための穴の検討の結果から導かれている。このような建築の原点には創造性あふれる素材の探求がある。本展では探求の過程を、建築と同様に色鮮やかでユニークな形状のいくつもの模型によって紹介する。 
AMID.cero9 《ゴールデン・ドーム》 2011 ©AMID.cero9
エル・アナツイ|El Anatsui アーティスト [1944年イギリス領ゴールドコースト生まれ、ナイジェリア在住] エル・アナツイは、ヴェネツィア・ビエンナーレの「5人の現代アフリカ人美術作家」展(1990)に出品し、アフリカ人として初の参加アーティストの一人となった。2000年以降は、瓶の蓋などの金属廃材を素材に用いた巨大なタペストリーを発表している。金属廃材はまず、アシスタント達の手によってハンカチ大の大きさに形成され、そうして出来あがったパーツをアナツイが一つ一つ組み合わせる。色と光で空間を鮮やかに演出するタペストリーは、その可変的形態から様々な表情を見せる。アナツイは多様で移ろいゆくイメージを投げかけ、今までコロニアル的な視点から求められてきた「伝統的」なアフリカの表象に対し、多義的な見方を促す。今回は新作《ガーデン・ウォール》を出品。 
エル・アナツイ 《ガーデン・ウォール》 2011
バーレーン王国文化省|The Ministry of Culture of The Kingdom of Bahrain バーレーン王国文化省は、自国の芸術文化活動や文化遺産の保存活用などに関わる文化行政と観光行政を担当する政=府機関である。本展では、第12回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展(2010)に出展し、各国館金獅子賞を受賞した作品《リクレイム》を再構成して展示する。これは埋め立てが進むことによって劇的に変わっていく海岸線に沿って移動していく漁師小屋に焦点をあて、批評的にドキュメントしたプロジェクトである。展示は、海が彼らにとって何なのかを語る人々のインタヴュー映像、小屋、そして小屋の状況を調査・記録した小冊子で構成される。このプロジェクトは、公共空間としての海岸の価値を問いかける。なお、本展で展示している小屋はバーレーンから移設したものである。 
バーレーン王国文化省 《リクレイム》 2010
ペトラ・ブレーゼ|Petra Blaisse ランドスケープ・アーキテクト [1955年ロンドン生まれ、アムステルダム在住] アムステルダム市立近代美術館で建築とデザインの分野に携わった後、1991年にInside Outsideを設立。テキスタイルを用いた空間デザインでレム・コールハースやSANAAなどの建築家と協働している。ペトラ・ブレーゼは、従来空間の付随物とみなされがちなカーテン、カーペット、庭園などを空間の中心的な素材の一つとして扱い、光、天候、季節といった自然環境の変化や、カーテンを開閉する人間の動作を取り込んだ動きのある柔和な建築空間をつくる。出品作《ガーデン・カーペット》は、《シアトル公立中央図書館》(OMA設計)のためにデザインされたものである。そこでは、拡大された植物のパターンによって建築の内外のつながりを生むとともに、空間にスケールと人の動きをつくりだした。同作品のきっかけとなった初個展「MOVEMENTS」(2000)で紹介された映像により、彼女の一連のカーテン作品をあわせて紹介する。 
ペトラ・ブレーゼ 《ガーデン・カーペット》 2004 Photo ©InsideOutside [参考画像]
ダグ+マイク・スターン|Doug + Mike Starn 一卵性双生児のアーティスト・ユニット [1961年ニュージャージー(アメリカ)生まれ、共にニューヨーク在住] ダグ+マイク・スターンは、写真にスクラッチやカットを施し、ピンやテープなどでコラージュする作品を多数発表してきた。2008 年より彼らは実験的インスタレーション作品《Big Bambù》の制作を開始する。この作品がメトロポリタン美術館の屋上に展示された際には、プロのロッククライマーとともに半年にわたる制作を行い15m以上もの高さを誇る巨大な構造体となった。本展覧会で紹介するのは、その刻々と変化していく《Big Bambù》の様子を捉えた写真作品である。彫刻、パフォーマンス、インスタレーション、そして建築など各分野を横断するこの作品は、絶えず変化していく生物の複雑さとその力を示唆している。 
ダグ+マイク・スターン 《BBMet_09.20.2010_s4737》 Photo ©Doug + Mike Starn
藤本壮介|Sou Fujimoto 建築家 [1971年北海道生まれ、東京都在住] 藤本は、自然が持つ豊かさ(複雑さ、曖昧さ、内部と外部の両立性や諧調性、意味の多様さなど)を人工的な建築空間として再構築することで、「自然のような建築」の具現を試みている。 出品作《House NA》は、そのような建築の在り方を東京都心に建つ夫婦二人のための住宅として実現させたものである。細い柱に支えられ、たくさんの小さな床が様々な段差で浮かび、それらは車の駐車スペースを確保しながらも、一本の樹木の中の様々な枝のように、人々の身体を受け止め、関係づけ、行為を誘発する場となっている。地形のようでもあり、建築のようでもあり、家具のようでもあり、また自然の樹木のようでもある、そうした多義的な解像度と豊かさを持った住むための場所を提示している。  
藤本壮介 《House N》 2008 Photo ©Iwan Baan
アントン・ガルシア=アブリル|Antón García-Abril 建築家 [1969年マドリード生まれ、同在住] 彼は、歴史や自然、立地条件などから抽出したコンテクストを重視しながら、大胆な工法で建築空間をつくり出す。出品作《トリュフ》は、ル・コルビュジエによるカップ・マルタンの「キャバノン」をモチーフにした休暇小屋の制作プロジェクトである。土を掘削したところへ、大量の干草のブロックを封じ込めるように直接コンクリートを打設し、周囲の土を取り除いたあと、中の干草を仔牛が食べ尽くすことで生まれた空洞をそのまま室内空間とした、ユーモラスで詩趣に富んだ作品である。その土地で入手可能な素材と実現可能な工法のみの力を借りることで実現した本作品の映像は、「いかに建築という構造物が自然環境の一部分となりうるか」という可能性に対する、建築家としての新たな挑戦の一端を見せてくれる。 
アントン・ガルシア=アブリル 《トリュフ(コスタ・ダ・モルテ、スペイン)》 2010 Photo ©Roland Halbe
フランク・O・ゲーリー|Frank O. Gehry 建築家 [1929年トロント生まれ、ロサンゼルス在住] 1962年に事務所を設立。複雑な造形を実現するために航空産業に用いる高度な演算ソフトを建築設計に導入したことで知られる。ゲーリーの建築はうねるような流線型と鋭い直線を採用した斬新で独創的なフォルムを特徴とする。ニューヨーク市役所、ブルックリン橋近郊に計画された最新作《エイト・スプルース・ストリート》では、優雅なドレープを描くカーテンウォールによってマンハッタンのスカイラインの景観に表情を生み出し、均質化されがちな超高層ビルの内部に多様な空間をつくった。まるで彫刻のようなその建築には、自由なアイデアを建築として実現させるためのプロセスが重要な役割を果たす。今回出品したスタディ模型、写真、図面はゲーリーがアイデアを三次元で具現化していく過程を窺い知ることができる貴重な記録でもある。 
フランク・O・ゲーリー 《エイト・スプルース・ストリート模型》 2003-2011
ジェラティン|gelitin アーティスト [ウォルフガング・ガントナー(1970年―)、アリ・ヤンカ(1971年―)、フローリアン・ライター(1967年―)、トビアス・ウルバン(1967年―)により、1993年活動開始。ウィーンを拠点に活動。] アーティスト集団ジェラティンは、身体そのものやそれを取り囲む環境に対する感覚に直接訴えかけるようなミックス・パフォーマンス、彫刻、空間を操作する作品などを制作する。過激な表現のなかにも、子供の遊びやいたずらを思わせる要素や、自由や楽しみといった感覚をより高めるような要素を盛り込まれ、斬新で奔放、且つ挑戦的で緊張感を孕んだ作品で常に話題を巻き起こしている。本展では、会期中に屋外でのパフォーマンスなどを予定。  
ジェラティン 《Normally, Proceeding, and Understricted With Without Title》 ヘイワード・ギャラリー(ロンドン、イギリス)2008 2008 ©gelitin
原広司+ローランド・ハーゲンバーグ|Hiroshi Hara+Roland Hagenberg [原広司: 1936年神奈川県生まれ、建築家、東京都在住。ローランド・ハーゲンバーグ:1955年ウィーン生まれ、マルチメディア・アーティスト、東京都在住] 原は、1960年代から独自の建築理論を展開し、また世界各地で実践した集落調査の成果などを《JR京都駅》や《札幌ドーム》などの建築に具現化してきた。本展では「様相について」「身のまわりについて」「記号場について」の3章からなるレクチャー映像を出品。ギリシャの哲学者や道元、鴨長明、ハイデガーを自在に引用しつつ、その建築理論を語る。西沢立衛(SANAA)と槻橋修(ティーハウス建築設計事務所)が聞き手を務め、原のレクチャーを受けて議論が展開される。撮影・編集は対談を通して数々の建築家や作家を見続けてきたハーゲンバーグが担当した。
平田晃久|Akihisa Hirata 建築家 [1971年大阪府生まれ、東京都在住] 平田は、生物の世界においてあらゆるものが絡まりあって連鎖しているように、周辺環境と絡まることができるのりしろを持った「からまりしろ」としての建築を提唱、実践する。本展では「ひだの原理」(ひだ状の形態を連続させることよって表面積を最大化させていく原理)によって生成された形態を持つ椅子《csh》、同じ原理を用いてパブリックとプライベートが一枚の連続するひだ(壁)によって複雑に分節された集合住宅《architecture farm》などのスタディ模型を展示。いずれも人工物であるが、自然の一部として自立する生命のような秩序と複雑さを内包し、人間の身体感覚に直接働きかけてくるような建築のあり方を提示している。美術館敷地内に設置された《ブルームバーグ・パヴィリオン》では、その建築的実践を実際に体験することができる。 
平田晃久 《architecture farm(澳底、台湾)》 2008 ©akihisa hirata architecture office
石上純也|Junya Ishigami 建築家 [1974年神奈川県生まれ、東京都在住] 石上は、無限に変化していく多様なスケールを自由に行き来することで、新しい建築のイメージをつくりだす。第12 回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展(2010)において、極限のスケールで自立する《空気のような建築》を発表し、金獅子賞を受賞。出品作《ガラスのシャボン玉》では、硬くもあり柔らかくもある新しい建築を提示する。同作品は、厚さ3mmの25枚のガラス板(1.8m×1.8m)のみで構成され、支持体は存在しない。ふわふわと宙を漂い、小さな空間(幅9m×奥行き9m×高さ約60cm)を内包するシャボン玉のような建築をイメージしている。硬くて重い大きなガラス板と地面との間を密閉し、その間に空気を吹き込むと、ガラス板は湾曲し、シャボン玉のように膨らむ。  
石上純也 《ガラスのシャボン玉》2011 Photo: Yasuhiro Takagi
伊東豊雄|Toyo Ito 建築家 [1941年京城府生まれ、東京都在住] 伊東は、20世紀の都市空間の形成に大きな影響を与えてきた近代主義的な思想や思考法を超えて、自然との親密な関係を回復し、太陽光や熱を、そして風を吸収して深く呼吸できる生命体としての建築の実現を目指す。出品作《台中メトロポリタンオペラハウス》では、《ゲント文化フォーラムコンペティション案》を発展させ、有機的なチューブの連続体によって内と外が連続する洞窟のような建築を提案。展示台に並べられた大小様々な模型からは、制作プロセスにおける彼の思考を追体験し、その足跡をたどることができる。作品は自然と人工物を隔てる硬い境界を解体し、その間に柔らかな関係を生み出すためのスタディの記録である。 
伊東豊雄 《台中メトロポリタンオペラハウス(台中市、台湾)》 進行中(2013年完成予定) CG: kuramochi + oguma The Taichung Metropolitan Opera House is built by the Taichung City Government, Republic of China(Taiwan).
クリスチャン・ケレツ|Christian Kerez 建築家 [1962年マラカイボ(ベネズエラ)生まれ、チューリッヒ在住] 「現実に完成した建築物の中で人々が実際に空間を体感することこそ、建築の本質である」という純粋な視点を貫く彼の建築は、ラディカルな構造と研ぎ澄まされた明快さを併せ持つ。本展では、ポーランド首都に計画中の《ワルシャワ近代美術館》の模型と映像(大きな縮尺の模型を小型カメラで撮影したもの)を紹介する。1950年代にスターリンによって建てられた文化科学宮殿の隣接地に計画されたこの美術館は、内部空間が可動式あるいは半透明の壁で仕切られており、前者の垂直性に対して水平方向への開放性が強調されている。特徴的な大小の波形を描く天井は、内部において空間の差異と断片、そして全体の連なりを表徴する、光のグラデーションをつくりだす。  
クリスチャン・ケレツ 《「ザ・トラウム & ヴィルクリヒカイト」 展での展示風景》 インスブルック、オーストリア 模型、構造模型、映像 2009 Photo: Nikolaus Schletterer
荒神明香|Haruka Kojin アーティスト [1983年広島県生まれ、東京都在住] 荒神は、これまでにも幾何学的な構造のインスタレーション作品を多数制作している。彼女の作品は非日常的な光景にも見えるが、日々眺める風景を抽象化させ空間概念を再構築することによって生み出される。2009年には本展の共同企画者である建築家妹島和世と構造設計者佐々木睦朗との協働によってインスタレーション作品《透明なかたち》を発表した。出品作《コンタクトレンズ》は、大小619個のレンズによって構成される。通常、私たちが眼球のレンズを通して知覚している世界を、実像を歪ませるレンズを集合させることによって、複眼を持つ生物の視点から世界を見たかのような、世界の多様な捉え方を鑑賞者に促す。  
荒神明香 《コンタクトレンズ》 2011
近藤哲雄|Tetsuo Kondo 建築家 [1975年愛媛県生まれ、東京都在住] 近藤は、環境との関係性や現象学的な事象に感心を寄せ、環境の中に建築をつくるのではなく、建築によって現在の状況を更新することで新しい環境をつくりだす。出品作《A Path in The Forest》(森への小径(こみち))は、エストニアの首都タリンで2011年10月に完成したインスタレーションであり、本展ではその模型と写真を展示する。タリン中心部にはカトリオルグという古い宮殿のまわりに広大な森があり、このプロジェクトは樹齢300年の木々からなるその美しい森の中に、ひらひらと縫うような小さな径(みち)をつくるプロジェクトである。全長95mの小径(こみち)は139mmの鋼管と厚さ5mmの鉄板を主構造とし、ところどころ木々によりかかることで成立している。柱は1本もない。森のための建築のようでもあるが、まるで建築に合わせて森があるかのような状況をつくりだしている。 
近藤哲雄 《A Path in The Forest》 カトリオルグ公園(タリン、エストニア)2011 ©Tetsuo Kondo Architects
ルイザ・ランブリ|Luisa Lambri アーティスト [1969 年コモ(イタリア)生まれ、ロサンゼルス在住] ミラノ大学で文学と哲学を学んだルイザ・ランブリは、ル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエらの近代建築のイコン的作品や、SANAAやヘルツォーク&ド・ムーロンなどによる同時代の建築作品を被写体としている写真家である。ランブリの作品は建築の外観や全体像ではなく、光や気配といった空間での体験を捉えており、人と建築との私的な関係性を表現している。アメリカを代表するモダニズム建築家ジョン・ロートナー設計の《シーツ/ゴールドスタイン邸》を収めた本展出品作品は、窓という一部分のみを写すことで建築を脱構築的に表現する。この作品は、時間や人との関係を通じて建築が得た非物質性を写しだしている。 
ルイザ・ランブリ 《無題(シーツ/ゴールドスタイン邸 #1)》 2007 レーザークローム・プリントCourtesy: the artist and Luhring Augustine, New York
ウォルター・ニーダーマイヤー|Walter Niedermayr 写真家 [写真家|1952年ボルツァーノ(イタリア)生まれ、同在住] ニーダーマイヤーは、ゲレンデの風景や建築物を被写体とし、漂白されたような透明性の高い色調によって現実感の薄い印象の写真を制作する。さらに彼は風景を同じ位置から角度を振って撮影したもの、あるいは特定の一点を異なる位置から撮影したものなど、2点以上の写真を複数組み合わせて構成する。それによって画面どうしの関係に微妙な「ずれ」が生じ、観る者に、角度や方向の感覚が鈍化されるような浮遊感を与える。彼の写真は一般的な「建築写真」とは異なり、人間と周りの環境の間に起こる現象、あるいはその両者が相互に浸透するような感覚をうつしとるものである。それは、人々を三次元的に取り巻く空間・環境としての建築の魅力を、二次元のイメージのなかに見事に凝縮したものといえる。本展では、2010年に完成したSANAAによるロレックス・ラーニング・センターの建設風景を撮影した作品《Rohbauten 72》(2008)を展覧会のメイン・ヴィジュアルとしている。
オフィス・ケルステン・ゲールス・ダヴィッド・ファン・セーヴェレン|Office Kersten Geers David Van Severen 建築家 [ケルステン・ゲールス(1975年―)、ダヴィッド・ファン・セーヴェレン(1978年―)により、2002年設立。ブリュッセルを拠点に活動] 彼らは、大袈裟な表現手段に頼らず、簡素な造形と端的な空間操作によって形や空間そのものが持つありのままの魅力を引きだし、新しい環境をつくりだす。第12回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展《ガーデン・パヴィリオン(7つの部屋/21のパースペクティヴ)》(2010)では写真家のバス・プリンセンと協働し、銀獅子賞を受賞。本展では、当館地下1階の美術図書室光庭に、1階床と同じ高さに水平に連続する新しい境界面(薄い膜による天井)をつくりだした。この操作によって、光庭に柔らかい光をもたらすとともに、新たに植物も挿入することで、これまでの閲覧室と司書室の間の閉ざされた空間をより開かれた親密な空間へと生まれ変わらせた。 
オフィス・ケルステン・ゲールス・ダヴィッド・ファン・セーヴェレン 《パティオ & パヴィリオン》2011
ピエト・オウドルフ|Piet Oudolf ランドスケープ・デザイナー [1944年ハールレム生まれ、ヒュメロ(オランダ)在住] 建築を学んだのちランドスケープ・デザイナーに転身。個人所有の庭園からニューヨークのバッテリー・パークなど公共の庭園まで幅広く手掛ける。植物研究者でもある彼は、花や葉の色彩・形状のみならず、茎の構造、質感、生長過程、開花時期などあらゆる条件を基準にした精密な選定を行い、大胆で独創的な植栽をつくりあげる。彼はそのガーデン・デザインのプロセスにおいて、複数のトレーシングペーパーを重ね合わせることで、植栽を各層に分けて構想する手法を用いる。今回出品されるこれらのスケッチには、季節の移り変わりとともに繰り返される生と死、そして再生という、自然のライフサイクルのなかに現れる草花の美しさを重んじる姿勢を感じ取ることができる。 
ピエト・オウドルフ 《オウドルフ・ガーデン(ヒュメロ、オランダ)》2007 ©Piet Oudolf
スミルハン・ラディック|Smiljan Radic 建築家 [1965年サンティアゴ(チリ)生まれ、同在住] 革新的動向を見せるチリ現代建築界において一際注目を集める。近年は彫刻家マルセラ・コレアとの協働による作品も発表している。今回出品される映像作品《Un Ruido Naranjo(オレンジ・ノイズ)》には、もくもくと煙を吐く巨大な球形の炭焼き小屋や、上層階がテントのような構造の自邸など、どこにも痕跡を残すことなく消えてゆく「隠れ家」のような空間として考案された建築物が登場する。これらは、現実に存在しながらも、どこか曖昧で頼りなく脆弱なものである。しかしまたその儚さゆえに、かえってポエティカルで私的な物語性を孕む独特な存在感を放っている。 
スミルハン・ラディック 《クリプランの炭焼き小屋の増築》 1999 Photo ©Smiljan Radic [参考画像]
マシュー・リッチー|Matthew Ritchie アーティスト [1964年ロンドン生まれ、ニューヨーク在住] マシュー・リッチーは、第11回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展(2008)において、建築事務所アランダ╲ラッシュや先端幾何学ユニットArup AGUと共に、アートや建築、科学の諸領域を横断する立体作品《イヴニング・ライン》を発表した。本展ではそのシリーズの延長にある、連続する幾何学的なアルミニウムの構造体によって構成される作品《ドーン・ライン》を展示する。展示空間に合わせ再構築されたこの作品は、構造体のアーチをくぐり抜けた先に、水の中で歪んで映る構造体が原始生物のように移動する映像作品《マーシナル》が投影されている。《ドーン・ライン》は、宇宙とは情報が境界線上に描かれるホログラムとして理解できる、一種の絵のような物だと語るリッチーの世界観を、構造体と映像によって多次元的に表現している。 
マシュー・リッチー+アランダ╲ラッシュ+ダニエル・ボシア&Arup AGU 《ザ・ドーン・ライン(サン・ドッグ・ヴァリアント)》 2009 Photo ©Jason Mandella, Courtesy Andrea Rosen Gallery, New York [参考画像]
妹島和世+西沢立衛/SANAA|Kazuyo Sejima+Ryue Nishizawa/SANAA 建築家 [妹島和世(1956–)、西沢立衛(1966–)により、1995年設立。東京を拠点に活動] SANAAは、2010年にプリツカー賞を受賞するなど、現代建築界をリードする建築家ユニット。《ロレックス・ラーニングセンター》は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のキャンパス内に計画された、学生や教職員、地域の人々に開かれた学習センター。図書館、多目的ホール、オフィス、カフェ、レストランなど、多種多様なプログラムを持つ。空間は166.5m×121.5mの巨大な一室空間で、空中に上がったり地面に下がったりと緩やかに隆起することで、室内に地形的な空間をつくりだした。また、大きさや形の異なる14の中庭の穴を空けて、空間を緩やかに分節することで、様々な性格の空間が生みだされている。出品作の模型は、彼らが設計過程の中で幾度となく試行錯誤を重ねてきた痕跡が残された貴重なアーカイヴでもある。 
SANAA 《ロレックス・ラーニング・センター》 2007
トランスゾーラー+近藤哲雄|Tetsuo Kondo+Transsolar トランスゾーラー社でディレクターを務めるマティアス・シューラー(クライメート・エンジニア: 1958年シュトゥットガルト生まれ、同在住)と近藤哲雄(建築家: 1975年愛媛県生まれ、東京都在住)は、第12回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展(2010)において、雲の中を回遊できるインスタレーション《クラウドスケープ》を発表した。トランスゾーラー社は、環境に配慮したサスティナブル・ビルディングを牽引するドイツを中心に世界中で活躍するクライメート・エンジニア( 建物内の気候を担当する技術者)らによる専門家集団。シューラーが会場の中に人工的な雲を発生させ、近藤が既存の柱に取りつくように円弧を描きながら上下するスロープを設置した。本展では、円筒形の小さな空間に人工的な雲を発生させる。 
Transsolar & 近藤哲雄 《クラウドスケープ 第12回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展(ヴェネツィア、イタリア)》 2010 ©Tetsuo Kondo Architects
セルガスカーノ|selgascano 建築家 [ホセ・セルガス(1965–)、ルチア・カーノ(1965–)により、1996年設立。マドリードを拠点に活動] 特徴的な素材の選択とさまざまな技法によって制作されたスタディによる試作プロセスを経て建ち上がるセルガスカーノの建築は、スタディ模型の質感そのままに鮮やかな色彩と機能性が同居する。それらは先鋭的でありながら、環境との共生を実現させたサスティナブルな建築である。本展では彼らのオフィスの棚に実際に並ぶ、建築的思考の蓄積と言えるスタディ模型の数々を出品する。小さな部品や素材詳細分析を経て設計されるセルガスカーノの建築は模型と相互関係にある。そのため彼らの建築はプロジェクトの大小に関わらず、誰しもの身の周りにある日常が色濃く反映されるとともに、全体を通して細部にまで渡る一貫性が生まれている。 
セルガスカーノ 《(from) OURShELVES》 1999-2011
スタジオ・ムンバイ|Studio Mumbai 建築家 [ビジョイ・ジェイン(1965–)により、2005年設立。ムンバイを拠点に活動] 人間と自然と機械との関係から生まれる環境の在り方に関心を寄せるジェインによって指揮されるスタジオ・ムンバイは、建築家、大工、石工、家具職人など150人近いスタッフで構成される。インドならではの気質を持った個性あふれる職人と建築家との対話の中から生まれる建築には、場所に根差した素材や技術が随所に取り入れられている。彼らの建築の原点ともいえるスタジオの環境を再現した《ワーク・プレイス》は、第12回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展特別表彰作品であり、当館の空間に合わせて再構成したものである。そこに並ぶものの多くは、《コッパー・ハウスⅡ》の設計過程で用いられたものであり、建築をつくる彼らの対話に触れることができる。 
スタジオ・ムンバイ 《スタジオ・ムンバイ・ワークショップ》 2011 Photo ©Studio Mumbai[参考画像]
フィオナ・タン|Fiona Tan アーティスト [1966年プカンバル(インドネシア)生まれ、アムステルダム在住] フィオナ・タンの映像インスタレーション、写真といった作品はこの10年で国際的な評価を得ており、これまでに多数の国際展に出品されてきた。フィオナは東洋と西洋に育つという自身の背景から、ポストコロニアル時代の世界における自身のアイデンティティの探求をテーマのひとつとして制作をしてきたが、近年ではドキュメンタリーフィルムの制作に力を入れている。《Cloud Island》では、彼女の典型的手法であるフォーカスやロングショットによって瀬戸内海の犬島・豊島などの風景を捉えた。この作品では、美しい自然環境のみならず、採石場や銅精錬所の跡地などかつての産業の繁栄を物語る風景、島々で展開するアートプロジェクト(直島福武美術館財団)と共生する島民の現在の姿が映し出されている。 
フィオナ・タン 《雲の島I, Project for the Venice Architecture Biennale 2010》 2010 2 channel HD installation, Commissioned by Naoshima Fukutake Art Museum Foundation, courtesy WWA, Tokyo [参考画像]
ヴィム・ヴェンダース|Wim Wenders 映画監督、アーティスト [1945年デュッセルドルフ生まれ、ベルリン在住] 著名な映画監督であるヴェンダースの出品作品《もし建築が話せたら…》は、2010年にSANAA が手掛けた《ロレックス・ラーニングセンター》を舞台に、人と建築の対話を描く3D映像インスタレーションである。自然の地形と建築とが連続するかの様に豊かな三次元性を持つその建築を表現するため、ヴェンダースは最新の3D映像を採用した。建築は、時には人々に労りの言葉を投げ掛け、時には自身について語る。人格を持った建築が様々な人々に語りかける様子は、3D映像による新しい空間体験とともに、人と建築の新しい関係を提示している。本展では、従来の英語版に加え、新たに制作した日本語吹替版を加えて上映する。 
ヴィム・ヴェンダース 《もし建築が話せたら…》 2010 Photo ©Donata Wenders; from left: Wim Wenders, Ryue Nishizawa, Kazuyo Sejima [参考画像]


靉嘔 ふたたび虹のかなたに
田中敦子―アート・オブ・コネクティング
ブルームバーグ・パビリオン・プロジェクト
MOTコレクション
クラウドスケープ
MOT携帯サイトはこちら
MOTメルマガ会員申込
MOTスタッフブログ
教育普及プログラムブログ